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縄文杉の風格
度重なるテロ事件の数々に、海外旅行の気力がなえてしまいました。
2015年11月13日 パリ同時多発テロ事件 コンサート会場等で爆発、銃撃 死者130人
2016年3月22日 ブリュッセル連続テロ事件 空港、地下鉄駅で連続爆発 死者35人
2016年6月28日 イスタンブール空港テロ事件 爆発、銃撃 死者48人
2016年7月1日 ダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件 爆発、銃撃 死者28人
2016年7月14日 ニース・トラックテロ事件 トラック暴走、銃撃 死者84人
テロを力で封じ込めるのは無理なのではないでしょうか?
差別、貧困を解消してテロリストが生まれない世の中にするべきです。しかし、これも難題・・・。
国内でも行きたい所は沢山あります。
年々体力が落ちて行くでしょうから、今のうちに過酷な行程の場所に行きたいと考えました。
そこで以前から行ってみたいと思っていた所の一つである屋久島の縄文杉を考えました。
縄文杉を見る・・・それがどれくらい過酷なのかを調べると、往復10時間はかかるらしい。
しかも山道・・・。
休暇の都合が合い、次男も一緒に行く事になりました。次男の体力は心配ないでしょうけど、家内の体力は大丈夫でしょうか?
いやいや富士登山の例もあります。私が一番先に音を上げてしまうかもしれません。
体力の問題ではなく、天候の問題で行く手を阻まれるかもしれません。まあ、心配ばかりしていても何にもなりません。
行けなくなったら、その時はその時で、諦めるしかありません。
せっかく屋久島に行くなら、もののけ姫の森のモデルになった白谷雲水峡にも行ってみたいと言う欲張り日程を考えました。
縄文杉ほどのハードコースではないけれども、白谷雲水峡も、5〜6時間の山道らしいです。疲れるだろうなあ・・・。
飛行機、新幹線、高速船、レンタカー等交通手段を色々考えましたが、
旅費と利便性を考えて自家用車でフェリーを使う事にしました。長距離運転もありますが、次男も同行してくれるので心強い。
◆2016年8月1日
自宅を午前4時半に出発。7時半に鹿児島港に到着。
車でフェリーに乗るのは何年(何十年?)ぶりだろう・・・とか思いながら乗船手続きを済ませ、8時半出航。約4時間の航海。
船の前方のデッキから屋久島が見えてきました。遠くに霞んでいる感じで、島の山々の上部は雲で隠れていました。
隣で見ていた外人男性に「あれは屋久島なのですか?」と聞かれました。私も初めて見る屋久島でしたが、
屋久島以外にはありえないので、自信を持って肯定できました。ノルウェーから来られたそうで、
私が「屋久島は初めて」と言うとびっくりしていました。
船から降りる時に、先ほどのノルウェー人は、カップルで来ている事に気付きました。
12時半、宮之浦港に到着。ちょっと違う土地に来た感じがして、ワクワク感に浸りながらドライブを開始しました。
もう昼食の時間です。私は、エビフライとかがある和食の店に行きたかったのですが、
家内と次男の希望で空港近くのイタリア料理店イルマーレに行きました。それほど混んではいなかったのですが、
店員さんが二人だけで、料理が出て来るまで結構待たされました。
待ちに待って出てきたピザとパスタは、思いがけなく(失礼!)本格的で美味しくて、それは、それは、感動しました。
最初に屋久杉自然館を訪問。折れた縄文杉の枝が出迎えてくれました。屋久杉の歴史も興味深かったです。
面白かったのは床に敷き詰められた栂の木のブロック。歩くとカタカタとやさしい音がします。
全体的には、まあまあの博物館だったかなあ・・・。近くのバス停で、明日の縄文杉登山口への往復バスチケットを購入しました。
今の時期、縄文杉登山口への道は一般車両は乗り入れ禁止なので、必ずこのバスを利用しなければなりません。
次に訪れたのがヤクスギランド。
まず、そこまでのアクセス道路にびっくり!最初は片側1車線の快適な道だったのですが、
途中から片側通行の道が・・・それも場所によっては結構長い距離が片側通行。
こんな所で対向車と出会ったら、大変です。しかも本数は少ないとはいえバスも通っているのです。
道路幅拡張工事が行われていましたので将来はこんな事はなくなるのでしょう。
途中、一匹の鹿をちらっと見かけました。
ヤクスギランドの駐車場に到着して登山靴に履き替えたりしていると、管理人らしき人が寄ってきて話しかけて来ました。
ヤクスギランドの事を話してくれるのかと思いきや、
「明日縄文杉に行くの?縄文杉は大きいけど、近づけないからね。ここから車で約15分の紀元杉は、大きくて間近に見られるからとても良いよ」
との事。日暮れの時間を気にしないといけない時間帯でしたので、ヤクスギランドは最短の30分コースを回って、
早めに切り上げ、紀元杉を見に行く事にしました。
ヤクスギランドの道は、とても整備されていて歩きやすかったですが、結局は山の斜面です。傾斜の急な道も多く、
楽な道ではありませんでした。30分コースでしたから、くたびれ果てる前に出口に着きました。明日は縄文杉ですから、
今日、くたびれ果ててはいけません。
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千年杉 |
清涼橋 |
それにしても、ヤクスギランドという名は、のんきな遊園地みたいです。道は整備されているとはいえ普通の山道です。
もっと適当な名前はなかったのでしょうか?
ヤクスギランドから、車で約15分、紀元杉の駐車場に着きました。駐車場からほんの少し階段を降りると、紀元杉が
目の前に立っています。目の前過ぎて、写真に入りません。
近くに水場があって屋久島の美味しい水と対面。
帰りの道ではサルとシカに何度も遭遇。車を停めて写真をとりました。夕暮れが近づいていたからと思いますが、
車とは一回も遭遇しなかったので、ゆっくり写真が撮れました(それにしては手ブレ写真ばかりでした)。
一方通行で対向車と鉢合わせという事もなく、広い道路まで来ました。
縄文杉へ行く前日と当日は、縄文杉登山口に近い場所にこだわって、安房の町に宿(屋久島グリーンホテル)を取りました。
このホテルには「ノークリーン」というプランがあって、
「連泊ご利用のお客様で、お部屋のお掃除・アメニティ交換をしない代わりに、500円の館内利用クーポンをお一人様に1枚づつさし上げます」
という事でしたので、このプランにしました。
(二泊宿泊後の感想:掃除はしてもらわなくても全く構わなかったのですが、タオル交換はして欲しかった。
タオルもアメニティに含まれているとは!)
創作和食 居酒屋じぃじ屋にて夕食。ここでも良い意味で裏切られ、洗練された料理を楽しめました。
◆8月2日
今日は、縄文杉へ向かいます。ホテルで朝、昼の二食分の弁当を受取り、いざ出発!
4時40分発のバスに間に合うように屋久杉自然館前のバス停に来ましたが、既に多くの人が列を作ってバスを待っていました。
バスが到着して乗客が乗り始めて、なんと私達の目の前で締め切られ「あと二人・・・」と言われました。
三人グループの我々は乗れないので、後続の二人組が喜んで先に乗っていきました(残念!)。
次のバスを待つ間に弁当を食べました。バスに乗り込んで、出発は5時。このバスも満員で、次のバスを待つ人も沢山いました。
登山口へ至る道は、とても狭い道で、バス一台が通るのがやっとです。
運転手は時々どこかと連絡を取っていました。やがて逆方向からのバスが退避場所に停まっているのを見かけました。
そんなすれ違いの連絡をしていたのかもしれません。
左側の窓を何気なく見ていると、思いがけず、特異な形の岩(太忠岳の天柱石)が見えて得した気分になりました。
登山口到着は5時40分頃。トイレに行って、6時頃登り始めました。
登山口に着いてからすぐに弁当を食べる予定だったので、始発のバスに乗れなかった事は、登山開始時間にあまり影響はなかったと思われます。
登山口からすぐにトロッコ道が始まります。最初は悪いトロッコ道で、後半から良いトロッコ道になるのです。
そうなんです。トロッコ道にも良いトロッコ道と悪いトロッコ道があるんです。
悪いトロッコ道は、常に枕木を見て足の踏み場を確認しながら歩幅を変えて歩く必要があります。
一方、良いトロッコ道は、木の板が敷かれているので、足の歩幅を変える必要がありません。
しかし、良いトロッコ道でも油断していると、木の板の端を踏んで、オットット・・・となってしまった事もありました。
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良いトロッコ道 |
悪いトロッコ道 |
トロッコ道は延々と続きます。途中何度か、橋を渡るのですが、中には欄干のない橋もあるのです。ちょっと怖い感じがします。
強い風が吹いていたら怖くて渡れないかもです。
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トロッコ道は続く |
そしてトロッコ道は続く |
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仁王杉 |
大株歩道入口でトイレ休憩。ここのトイレの便器には常時水が流れていて、一見、清潔そうなのですが、強烈な匂いに閉口しました。
大株歩道に入ると、いきなり急な山道になりました。
ガイドブックにも「屋久島では登山道の事を『歩道』と称し、一般的な歩道と異なる」と注意書きがあります。
「ヤクスギランド」にしても、「歩道」にしても、屋久島では人が油断するような名前を付ける傾向があるのでしょうか?
「ヤクスギランド」→「ヤクスギワイルドランド」もしくは「屋久杉自然公園」
「歩道」→「登山道」もしくは「山道」
に、それぞれ改名されることを希望します(無理でしょうけど・・・)。
大株歩道に入って、しばらく歩くと、翁杉(木は倒れ、株だけ)が現れました。
それから間もなくウィルソン株に到着しました。
ウィルソン株は、伐採されて残った切り株。その大きさもさることながら、株の中に入って上を見ると、ハート型が見えるので有名。
ハート型に見えるポイントは、場所を説明する声が聞こえてきてすぐに分かりました。でも人が多くて気ぜわしい感じでした。
しゃがんで写真を撮ったら、もっと綺麗なハート型に見えたみたいです。
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ウイルソン株 |
ウィルソン株の中から 上を見上げる |
これから先、木製の段差が急な階段が続き、いっそう辛い道のりになりました。
階段は狭いので、下山してくる人とすれ違うには、どちらかが待たなければなりません。
多人数のグループとすれ違うには、結構時間がかかりました。とは言うものの、今日は、それほど混んでいない方だと思います。
混んでいる日は、待ち時間だけでも相当なものでしょう。途中で弁当を食べて、さあ、あとひと踏ん張りです!
12時頃縄文杉着。やれやれ、やっと着いた・・・。最初に着いた展望デッキは今年の3月に出来たばかりとの事。
以前の展望デッキは縄文杉の大枝が落下してくる恐れがある場所だったので撤去されたそうです。
展望デッキは人であふれていて、撮影ポイントでは順番待ちでした。
ここから見る縄文杉はかなり遠い感じでした。ここに来るまでに沢山の大きな屋久杉を見てきましたので、それほど大きく感じませんでした。
また、縄文杉の周りは金網だらけ・・・。ちょっと興ざめですが、金網は、多くの人から踏み荒らされてむき出しになった根を保護するためのものだそうです。
展望デッキは、少し高い所にもう一つあって、こっちの方が縄文杉に近い。
やはり縄文杉には圧倒的な風格があります。その風格を目に焼き付けておこうと、しばしたたずみました。
この展望デッキも、縄文杉に近すぎて大枝の落下の危険があるとの事で、撤去される予定があるそうです。
安全のためとはいえ、縄文杉は、ますます、遠い存在になってしまうようです。
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最初の展望デッキより |
少し高い展望デッキより |
縄 文 杉 |
6時間位かけてやっと辿りついた縄文杉ですが、いつまでも見ているわけにはいけません。登山口まで戻らなければなりません。
登ってきた山道を戻り、ウイルソン株を過ぎ、大株歩道入口まで戻るとトロッコ道に出ました。
ここまで戻ると、もう登山口はすぐそこのように錯覚してしまいました。来る時と同様、トロッコ道の長いこと長いこと・・・。
単調なトロッコ道を歩きながら考えました。
樹齢7,200年とも言われる縄文杉は、圧倒的な風格を備えています。その風格はどこから来ているのでしょうか?
7,200年もの間、風雨に、時には雪に耐えてきたからに他ならないでしょう。
多くの杉の木は若くして折れ、朽ち、あるいは伐採されてきたのです。
人間はどうでしょうか?長寿の人には、やはりそれぞれの風格があります。
しかし、長寿でなくても風格がある方はいらっしゃいます。
それらの人の多くは、他の人を圧倒する何らかの能力をお持ちのような気がします。
杉の木は、長寿になるしか風格を出す方法がなくても、人は、あらゆる方面で風格を出す可能性を秘めているのでしょう。
その風格を出すためには、それぞれの道で、倦まず弛まず努力を続ける必要があるのでしょう。
それにしてもトロッコ道は、長い・・・倦まず弛まず歩き続けるしかありませんでした。
この道を行けば風格が付くのなら良いのですが・・・風格への道は、トロッコ道より遠いに違いありません。
それにしてもトロッコ道は、長い、長い、長い・・・。
17時発のバスにギリギリ間に合いました。満席に近く、我々はバラバラに座るしかなく、私は補助席に座りました。
結局、休憩時間も含めて、11時間のトレッキングでした。
ホテルに帰って、一風呂浴びて、焼肉店に行こうと思ったら、休店日。
他の店を探して「屋久どん」前を通りかかる。うどん屋さんかと思ったら、看板には「レストラン屋久どん」とあって、
レストランか・・・と思ったら、うどん中心の郷土料理のお店でした。まあいいか・・・という感じで、あまり期待せずに入りました。
しかし、出てきた飛び魚のから揚げにびっくり。大きくて美味しくて背骨は以外は全部食べられました。ここでも良い意味で裏切られ美味しい食事でした。
◆8月3日
今日は、白谷雲水峡へ向かいます。縄文杉コースみたいに早朝から行く必要はないので、ホテルで朝食を済ませ、8時過ぎにホテルを出発しました。
9時頃に白谷雲水峡の入り口に着きました。
我々三人とも、昨日の11時間のトレッキングの疲れで足取りが少し重かったのですが、なんとか元気に歩けました。
苔むす森と太鼓岩には行きたいので、遠回りになる奉行杉コースは行かない事にしました。
苔むす森への近道が、「楠川歩道」です。またまた出ました「歩道」! 「歩道」とは名ばかりで、山道です。
しかし、楠川歩道は、とても美しい道でした。
「ここが苔むす森です」と言われたとしたら、すぐに信じてしまいそうな美しい苔が密生している場所の連続でした。
ちらほら見える沢が美しい。また、時折、沢を渡るのが印象的でなんだか楽しい。
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七本杉 (幹の上部に太い枝が沢山) |
苔むす森に到着。確かに美しい所です。
でも、ここ以外のどこでも美しい!
前方の横に伸びた木が何だか不思議・・・。
幻想的な苔むす歩道。
辻峠に到着し、昼食。ここから、最終目的地の太鼓岩までもうすぐですが、ここからが急勾配で大変でした。
12時頃、太鼓岩に到着。岩の上は平らな所がほとんどなく、手すりもありません。
へっぴり腰か、四つん這いになって下を見下ろしました。もやがかかっており、遠くまでは見渡せなかったのが残念でした。
上の岩に登った後、すぐ下にある岩の上に乗ってみました。こっちの方が勾配が急で怖い!
這いつくばるようにしてすぐに降りました。お〜怖い、怖い・・・。
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女神杉 |
急勾配の道を降り、辻峠へ戻りました。そして、辻の岩屋へ行きました。
この岩屋は、もののけ姫の山犬の棲家のモデルとなったそうです。
岩屋の下で弁当を食べているグループが居て、写真撮りにくかったです。
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辻の岩屋 |
きれいな歩道 |
白谷小屋でトイレ休憩中に、フェリーで会ったノルウェー人カップルと遭遇。
これは、単なる偶然ではなく、屋久島での行動先が大体決まっているからでしょう。
再び楠川歩道を通って、15時頃入口に戻る。
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苔むす杉(荒牧の命名) |
舟形岩(荒牧の命名) |
憩いの大岩 (家内と次男も写っている) |
白谷雲水峡から車で山を降りると屋久島北部の宮之浦です。それから、今日宿泊予定のホテルの所在地、尾之間(屋久島南部)まで、
島の東部を通って約半周する道のり(車で約1時間)があります。
途中、千尋(せんぴろ)の滝に寄りました。巨大な岩盤の上を流れる大きな滝。展望台からはやや遠望なのがちょっと残念。
それから、次男の提案で、トローキの滝に行く事にしました。
この滝はそれほど大きな滝ではないけど、海に直接落ちる滝として、珍しいそうです。
なんと、日本には二ヵ所だけで、一つはこのトローキの滝で、もう一つは北海道の知床半島にあるカムイワッカの滝だそうです。
滝へ向かう歩道の入口を探すのにちょっと手間取りました。バス道路沿いにある、屋久島特産品の店「ぽんたん館」の駐車場に車を停めて、
道路の反対側に歩道入口が見つかりました。
整備された歩道をしばらく行くと、滝が見えるポイントがありました。
滝が見えるのは、文字通り、ワンポイントで、そこから木々の間の向こうに滝が見えました。
道の先に、小さな下りの道がありました。どうやら滝を別の角度から見られるらしいが、道は登山道みたいでした。
サンダル履きの家内はここで引き返す事になり、私と次男で道を下りました。
その時、私は革靴でした。本当に登山靴で来れば良かったと思うくらいの道でした。
でも、すぐにビューポイントに到着しました。先ほどのビューポイントから、それほど距離が離れているわけでもなく、
滝の見え方もそれほど大きく変わるわけではありませんでした。
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千尋の滝 |
トローキの滝 |
帰りにぽんたん館で買い物をした後、宿泊予定の、いわさきホテルへ向かいました。
屋久島の森に溶け込むように建つホテルの写真を何かで見て(いつどこで見たのかも忘れましたが)、
屋久島に行くならこのホテルに泊まろうと心に決めていました。
ホテルまでのアプローチ路は、手入れが良く行き届いた植え込みが延々と続いていて、
リゾートホテルへ近づいているのだという期待感が高まりました。
ホテルの玄関に到着すると、ホテルの係の方が早速近づいて来られて「車を駐車場へ回しておきますので、キーをお借りしてもよろしいでしょうか?」
という感じで言われて、鳩が豆鉄砲を食らったように感じました。山登りの後で車の中はメチャクチャな状態だったのです。
しかし、そこは厚かましい客を決め込んで、何食わぬ顔でキーを渡して車の移動をお願いしました。
ホテルのロビーも素晴らしい。前方左手には巨大な屋久杉のオブジェ(高さ13.5m、幹周り10m、製作費7,200万円!)がドーンと座っていました。
最上階まで吹き抜けのロビーの先は、総ガラス張りになっており屋久島の山々が壮大な姿を見せていました。
大浴場で一風呂浴びた後は、お待ちかねのディナー。夕暮れに刻々と姿を変えていく山々を眺めながらのコース料理は忘れられないものになりました。
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屋久杉オブジェ (人工物) |
◆8月4日
今日は、昼過ぎのフェリーで帰る日です。それまでは、屋久島観光を楽しむ予定です。
早朝、ホテルの庭園を散策。ホテルの庭園といっても侮るなかれ。周遊コースを一周するのに40分、滝まで回ろうとしたら90分もかかる庭園。
庭園を回るためのカートまであるのです。時間の都合で、周遊コース40分を歩く事にしました。
広くて、手入れの行き届いた庭園でした。
庭園散歩後、屋久島の西側を回って、観光しながら宮之浦港に向かう事にしました。
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ホテルロビーから 屋久島の山々を望む |
庭園から望むホテル |
ホテルの庭園 |
大川(おおこ)の滝
駐車場はガラガラでした。滝の前まで続く道が見通せて、私達の他には誰もいないのが分かりました。
滝の近くまで来て、滝を眺めていました。
舗装された道から外れて、ゴロゴロ転がっている大きな石の上を歩いて行くと滝壺の近くまで行けそうでした。
ふと駐車場の方向を見ると、中学生くらいの団体がゾロゾロ歩いて来ているではありませんか!
中学生達の前で道から外れて歩いているのはいけないかなあ・・・なんて思いながらも、大きな石の上を歩いて滝壺の近くまで行きました。
そしたら、何の事はありません。中学生たちは引率の先生とおぼしき人に引き連れられて、
ゴロゴロ石の上をどんどん歩いて滝壺まで向かっているではありませんか!
しかも、私達は気付かなかった、滝壺がより良く見えそうな場所まで歩いて行っていました。
西部林道
狭くて曲がりくねった道が続きました。すれ違いの時に一時退避場所に避けなければならない時もたまにはありました。
でも、全体的に交通量は少なくて、サルやシカに遭遇したら車を停めて写真を撮る事ができました。
最初は珍しくて何度も車を停めていましたが、後の方になると、またか・・・という感じで、停まりもせずに通り過ぎて行きました。
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道のまん中で 毛づくろいするサル |
近くまで寄っても 逃げないシカ |
横河(よっご)渓谷
渓谷に至る道をちょっと間違えて手間取りました。ようやく渓谷への案内板を見つけてほっとした所で、
フェリーで会ったノルウェー人カップルに再度の遭遇。レンタサイクルに乗っていました。白谷雲水峡の様に大勢の人が来る場所ではないので、
ここで会ったのはすごい偶然と言えるでしょう。
駐車場で車を停めてから、登山靴を履きたくなるような山道を3分位歩いて渓谷に到着。
綺麗な水の渓谷は、すがすがしくて気持ち良い。子供が喜びそうな所ですが、
ちょっとワイルドな渓谷で、水難事故には注意が必要かも・・・。そうです。ここは屋久島です。
ヤクスギランド、歩道、それに横河渓谷・・・屋久島では、人が油断するような名前を付ける傾向がありますからね。
永田いなか浜
横河渓谷から、車であっという間(直線距離で2km位)に海岸にでました。
屋久島の山々が海のすぐそばまで迫っているという事が実感できました。
それからすぐに、永田いなか浜に到着しました。ウミガメの産卵地として有名な美しい浜です。
ここでのんびり過ごすのも良い感じですが、帰りのフェリーの時間が気になって、先を急ぎました。
永田いなか浜を出る時に、バスが到着し、団体客が降りてきました。
先ほど大川の滝で会った中学生達でした。島内で見て回りたい場所は皆同じですね。
宮之浦港近くの店で買い物をした後、昼食。焼きサバは美味しかったのですが、サバが大き過ぎて食べ残してしまいました。
めったに食べ残さない私ですけど・・・。
帰りのフェリーも行きのフェリーと全く同じフェリーでした。
それもそのはず、鹿児島―屋久島間は、1艘のフェリーが一日一往復しているのです。
行きの時に座った席と同じ席に座ったら、行きのフェリーで見かけた親子がこれまた行の時と同じ席に座っている事に気付きました。
行きのフェリーで子供さんが学習ドリルを一生懸命やっていていましたので記憶に残っていました(もちろん、帰りのフェリーでも勉強していました)。
フェリーの中で時間を持て余しながら、今回の旅行を振り返ってみました。
縄文杉までたどり着けるか心配でしたが、大丈夫でした。白谷雲水峡も楽しめました。
それ以外にも、滝、渓谷、海、それからサル、シカといった自然を満喫する事ができ、とても満足しました。
今回の旅行中はずっと曇り時々晴れといった天気でした。
「屋久島では月に35日雨が降る」と聞いていて、雨も覚悟していただけに、本当に運が良かったと思います。
縄文杉ルート、白谷雲水峡ルートともに、ほとんどが木々の間の道で、直射日光に当たる時間が少ないので
帽子はほとんどかぶる必要がありませんでした。半袖シャツでも全く問題なかったです。
どこで食べた料理もそれぞれとても美味しく感じました。これだけ食事が美味しかった旅行も珍しいかもしれません。
ところが、ビールがあまり美味しく感じられなかったのです。しかも、しっかり体を動かした後のビールなのにです。
その理由は、実は明らかでして、私が水を飲み過ぎていたからです。
トレッキング中は喉が渇きますし、屋久島のトレッキングコースには、思わず飲みたくなる水場がふんだんにあるのです。
ついつい水を飲み過ぎていました。
今回は、道に迷ってしまうようなルートではなかったので、ガイドさんを頼んだりはしませんでした。
トレッキング中、他のグループのガイドさんの声はしょっちゅう聞こえて来て、参考になる事もありました
(あからさまに立ち止まって話を聞くわけにはいけませんでしたが)。
ガイドさんは休憩ポイントを知っているし、見どころも余さず説明してくれているようなので、
ガイドを頼めば良い事もあるでしょうけど、私は、自分達のペースで行動する自由が大事と思いました。
縄文杉コースでガイド料が一人当たり12,000円程度掛かるという事もありましたが・・・。
縄文杉を第一の目的にして屋久島に来ました。
しかし、旅行を終えてみると、屋久島全体のイメージが強く残り、縄文杉はその中の一つという感じがしました。
夕方6時前に鹿児島到着。
夕方の交通混雑で鹿児島市内を抜けるのに随分時間がかかりました。
高速道路に入って間もなくの、桜島サービスエリアにて夕食。ここのレストランは、いわさきホテルズと同じ系列による経営らしいです。
黒豚丼や黒豚ラーメンでしたので、ホテル食とは、全く違いましたけど、なんだか旅のなごりを感じる食事でした。
夜道のドライブは辛かったですが、途中で次男と運転交代。助かりました。22時頃帰宅。
◆8月5日(帰宅翌日)
地上波テレビにて「もののけ姫」が放送されました。何というタイミングでしょう。
映画館で見た作品でしたが、屋久島の美しい風景を思いだしながら楽しみました。
過酷なトロッコ道の事も思いだしました。
歩いても歩いてもゴールは見えません。単調なトロッコ道が続くのみです。しかし、この道の先には縄文杉があると分かっているから歩き続けました。
延々と続くトロッコ道は、さながら書や篆刻の稽古です。
稽古は単調な事を繰返します。何度も何度も繰り返します。しかし、進歩はままなりません。
疲れて休んだり、飽きて他の事をしたくなったりもします。
トロッコ道は先に縄文杉がある事が分かっていますが、
稽古の繰り返しの先に縄文杉の様な風格が得られるかどうか、確約はありません。稽古の先にあるものを信じて行くしかありません。
確かなのは、稽古しなければ先に進まないという事だけです。
2017年1月 記
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