遠近両用コンタクトレンズ

　私は強度近視で、ハードコンタクトレンズの愛用者です。しかし、コンタクトレンズを常用していると疲れるので、在宅時にはメガネをしている場合が多いです。印を刻る時も、大抵はメガネをしています。つまり、机の上の物も満足に見えないほど強度の近視と言うことです。でも、メガネをしていると、刻る時にはじけて飛んでくる石のくずが目に入る事を防ぐ効果もあります。（しかし、これはめったに起こる事ではありません）

　先ず初めに気づいたのは印を作成中でした。おやおや、何となく見えにくい。少し目を離した方が見やすいではありませんか！　来た来た！これが老眼なのだろうか。ちょっとショックでした。それなりの年齢になったと言うことでしょう。

　近視の私は、老眼になるのは遅いのではないかと言うかすかな期待をしていました。しかし、それは余りにも都合の良い期待でした。決して遠くが見えるようになる訳でもなく、近くが見えにくくなる・・・つまり、目のピント調整範囲が狭くなっていくだけなのですね。

　篆刻をしていく上で、目は非常に大切です。特に小さな印を作成する時には、細かな作業になります。本当に髪の毛一本分の違いを違いを云々する世界です。篆刻用にメガネを作らないといけないのかな？遠近両用メガネを作るべきだろうか？でも、遠近両用メガネは急に年を取ったようでいやだな・・・。

　そんな中、遠近両用コンタクトレンズの存在を知りました。これだ！と思いました。遠近両用メガネの仕組みは一目瞭然ですが、コンタクトレンズで一体どうやって遠近両用を実現しているのでしょうか？

上の説明図は、株式会社メニコンのホームページからの転載です（２００５年１月）。
レンズの種類により、また会社の違いによりレンズの仕組みは多少異なるようです。

　要するに、遠くを見る時は、目の中心部で見て、近くを見る時には、少し下目使いで見ると言う事で、遠近両用メガネと基本的には変わらないようです。無料お試しが出来るという広告もありましたので、以前から愛用しているメニコンの店舗に行って見る事にしました。

　遠近両用コンタクトを試してみたい由を店の人に話すと、検査を始める前に、「単焦点レンズの様にはクリアに見えない」と言われました。目の一部分で遠くを見て、別の一部分で近くを見る訳ですから、多少「にじんで」見えると言う事でした。え～～、そんな事聞いてないよ！でも、せっかく興味を持って、もちろん気に入ったら使おうと思って、ここまで来たのですから、一応試してみたい気持ちに変わりはありませんで、検査を始めてもらいました。先ず、通常の視力検査から始まりました。次に近用の視力検査で、小さな字が書いてある視力表を手で持って見ます。それが終わると、なんと！すぐにコンタクトレンズを持って来られました。単焦点レンズならまだしも、遠近両用コンタクトレンズが直ぐに出てくるなんて、いったい何個のレンズが用意されているのでしょう？（聞いてみればよかった・・・）

　さっそくレンズを装着してみました。う～ん、やっぱりにじんで見えると言うのが最初の印象でした。それから、暫くは、遠方にある視力表を見たり、お店の中を眺め回したり、机の上の視力表を見たりしていました。その間に「１ヶ月のお試し中に、万一、レンズを破損してしまったらどうなるのでしょう？」と言う事も聞きました。「その場合は１万円負担していただきます」との答にちょっと驚きました。高いから驚いたのではないです。安いと思ったのです。遠近両用コンタクトの片眼で、３万円以上します。紛失時に１万円とは、良心的な値段設定と思いました。もっとも、メルスプランと言ってレンズを購入することなく、月々定額料金を払う事で使う事が出来るシステムもあります。

　「近くを見る時は下目使いで」と言うアドバイスに従い、一生懸命下目使いで手元を見ますが、にじんで見える見え方が気になります。試しに近く用の視力表を顔の正面に持って来て、遠くを見る時のように目の中心で見てみましたが、見え方があまり変わらないではないですか！

　その事をお店の人に話すと、「その様な見え方で遠近両用を使うか、単焦点のコンタクトを使うかは、お客さんの好みでしょうね」と言う事でした。目の衰えを道具で完全にカバーする事はやはり出来ないのでしょうね。多少の不便は仕方ないなと思いました。（がっかり）

　他の人の倍以上の時間をかけて視力検査を行った後で、多少気が引けましたが、レンズを自宅で試してみるまでも無く、店での着用だけで遠近両用レンズをあきらめました。ちなみに、無料お試しにも、若干の検査料は必要でした。

　遠近両用のメガネでも、やはり同じようなものなのかなと思いました。近くの作業には近く専用のメガネでしっかり見ないと緻密な作業は出来ないでしょう。遠くを見る時には遠く専用のコンタクトレンズで見ないと遠くの景色を思う存分に楽しむ事は出来ないでしょう。それが私に合った使い方なのだろうと思いました。多少の不便は致し方ありません。

　その後、近くの作業用メガネを作り直しました。お金はかかりましたが、ちゃんと見えるメガネは、やはり楽です。今後、老眼が進行したら、またメガネを作り直す事になるでしょう。今回は目の衰えを感じた訳ですが、今後色々な老化現象を感じる事になるのでしょう。自分の体が衰えて行く事は、寂しい事ですが、それを嘆いてもしかたありません。元気な体を維持して行く努力はするとしても、そうなったものは、それとして受け止め、道具でカバー出来るものは、しっかりカバーした上で、今、自分が出来る事を精一杯して行くだけです。

２００５年１月

ホーム> 篆刻雑感目次>遠近両用コンタクトレンズ