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篆刻を始めてからの事

 父が篆刻を やっていたので、傍らで見ていて面白そうと思って始めました。理由は良く分かりませ んが、書道よりも面白そうに思えました。右も左も分からないまま、父に連れられて 吉野先生の教室に通うようになりました。

 いきなり本格的な作品作りをさせられましたが、なかなか理解できるものではありま せんでした。それでも、先生の指導を受けながら、折々に見る先生の作風にゾクゾクし ていました。正に、そのゾクゾク感が有るがために、不勉強な がら続ける事が出来たと思っています。

 いつの事だったか、父が吉野先生の教室をやめると言い出しました。述べていません でしたが、父と私は、熊本市在住で、先生は北九州市にいらっしゃいます。車で通っていま したが、決して楽ではありません。父と二人でならば、交代で運転できますが、父がや めてしまったらどうしようか? いろいろ考えました。

 しかし、恥ずかしい話ですが、その時に、篆刻を是が非でも続けようという強い意志が 有ったとは思えませんで、吉野先生の作風を見たときのゾクゾク感と、師村立卿先生を始 めとする社中の方々に支えられて続ける事が出来たと思っています。

 今でも、先生からは、入門当時と同じ注意をされる時があります。確かに、進歩して いない所もあると思います。しかし、不思議なのは、同じ注意を聞いても以前とは異な る受け止め方が出来るようになりました。少しは先生の真意が分かるようになったので はないかと自分で誠に勝手ながら思っております。

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