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ウルル探訪記

 ウルル(Uluru)と聞いて何の事か分かる人は、相当関心をお持ちの方ではないでしょうか?私はここに行って見ようと思ってから、初めてウルルの名称を知りました。 まどろっこしい事を言わずに、エアーズロック(Ayers Rock)と言った方が通りが良いでしょう。そうです、オーストラリアのほぼ中央部にある世界最大の一枚岩の事です。
 先住民族アボリジニは、この一枚岩の事をウルルと呼び、1万年も前から彼らの聖域となっています。ホテルでもらった資料によりますと、「1873年、英国人のウイリアム・クリスティー・ゴスは、アボリジニ以外でウルルに登った最初の人物となりました。彼は、ウルルを当時のサウスオーストラリアの植民地の総督次官であったヘンリー・エアーズにちなんで、『エアーズ・ロック』と名付けました。」 エアーズは、ゴス探検隊のパトロンだったそうです。つまり、ごきげん取りのための命名だったのでしょうね。
 最近はアボリジニの呼称を尊重し、ウルルと呼ばれる事が多くなっているようです。私もそれに従う事にします。
 ウルルの事を「地球のへそ」と言う人もいるようです。確かに、辺り一面の平原の中に圧倒的な存在感をもって立っているその姿は、「地球のへそ」にふさわしいと思います。でも、なぜ、でべそなのでしょう?地球のへそだったら、巨大な穴であるべきでは?穴では圧倒的な存在感を示す事が出来ないからなのでしょうか?また、ウルルは単なる自然遺産ではなく、この地のアボリジニ文化により、複合遺産として世界遺産に登録されています。  ウルルの圧倒的な存在感から、書における篆刻の事を考えました。書作品に押された印は、「白と黒」の世界の中の「朱」であり、圧倒的な存在感を示しているのではないでしょうか。そうです、篆刻は書におけるウルルなのです!「圧倒的」は言い過ぎでしたけど、存在感はあると思います。小さな「朱」が有るのと無いのとでは大違いです。その小さなもので書作品全体が引き立つのは何とも不思議な感じさえします。遠くから見れば朱点にしか見えないですが、その中には作者の思いが込められた小宇宙が存在します。印も、単なる朱色でなく、文化的、精神的価値がある「複合」物なのだと思います。でも、ちょっと見方を変えて地球規模で考えると(地球を書と考えると)ウルルは、本当に小さな存在でしょう。篆刻もそのような存在なのかもしれません。

 今回の旅行では、ウルル―カタジュタ国立公園、グレートバリアリーフ、クイーンズランドの湿潤熱帯地域(キュランダ)の3つの世界遺産を巡るのが目的です。
 ケアンズ行きの飛行機が関西国際空港を出発したのは午後8時を過ぎていました。機内食を食べ終わると映画が始まりました。この映画が現在公開中のファインディング・ニモでした。こんな新しい映画が飛行機で見られるとは思ってもいませんでした。そしてこの映画の舞台は、今回の旅行の目的地の一つのグレートバリアリーフなのです! ピッタリな映画の上映に感激でした。

 ケアンズ国際空港に到着したのが、まだ夜も明けらやぬ5時でした。ウルル行の飛行機が6時15分発なので、急いで旅行会社の係員のいる到着ロビーへ向かうように言われていました。入国審査の前には、別の便で到着した人も含めて長い人の列が出来ていました。空港の係員が犬(麻薬捜査?)を連れて人の列を回っています。入国審査のカウンターは2箇所だけで、審査も厳しいようでなかなか列が動きません。そのうち心配になってきました。この調子で進んでいたらウルル行の飛行機に乗り遅れてしまう!出発時刻の45分前になった時点で空港の係員を探しますが入国審査員以外に見当たりません。しょっぱなから旅行最大の危機に胃がキリキリと痛む思いでした。飛行機搭乗員専用の出口を覗いてみても誰も居ません。このままここから出てやろうか?とまで思いましたが(本当にそんな事をしたら、今度は出国出来なくなるかも・・・)、 幸い係員が来たので、乗継航空券を見せて、飛行機の時間が迫っている事を言いました。そしたら、長い列の一番前に案内してくれて直ぐに入国審査をしてくれました。心配しないで言って見るものですね。審査は厳しいと言うより、入国カードに何か書き込みをしていて時間が掛かっているようです。とにかく荷物を受け取り到着ロビーの旅行会社係員の所にたどり着けました。他のツアー客の方がまだ出てこられないと言う事で暫く待たされましたが、係員がいるので先ずは一安心しました。ケアンズ空港は国際線と国内線が別棟になっています。時間がないので、マイクロバスでの移動でした。国内線の航空券を読取り機で読んでもらって、直ぐ搭乗出来ると思ったら、広い飛行場に出て、搭乗ゲートを案内する地面のオレンジ色の線に沿って歩いて行くと何機か止まっている飛行機の中の一つにたどり着きました(これがウルル行なんだな)。飛行機に乗込みやっと安心しました。

 最初はウルルをバスの中から眺めながらカタジュタに向かいました。カタジュタ(アボリジニ語で「たくさんの頭」の意味)はウルルから30km程離れた所にある大小36個の奇岩群から成ります。

 宮崎駿監督が、ここカタジュタの「風の谷」で「風の谷のナウシカ」の構想を練られたと言う事は結構知られた話のようです。映画に出てくるオームのモデルになったと言う岩山もありました。何と見慣れない光景でしょう。

 それから、ウルルのサンセットをシャンパンを飲みながら見ようと言うツアーに続きます。シャンパンは、一杯だけかと思っていたら、おかわりも好きなだけ出来て(何杯もおかわりするほどあつかましい人が少なかったのでしょうか)、私はすっかり出来上がってしまいました。

地平線近くの雲にじゃまされて、夕日に赤く染まるウルルを見る事はできませんでした。(赤く染まったのは酔っ払った私の顔だけでした)

夕日と反対側の空から2本の不思議な線が見えました。その線がこの後3本に・・・。 この現象が何なのかご存知の方は、いらっしゃいませんか?
手前はシャンパン乾杯会場風景。


 翌日はウルル・サンライズ観光とウルル登山ツアーに早朝の5時から出発でした。バスの中で添乗員が「おはようございます。昨夜はウルルに登れるようにお祈りされましたか?」と言いました。星もたくさん出ていたし、何でそんな事言うのかなと思っていました。そうそう、南十字星と逆さになったオリオン座も見る事が出来ました。夜明け前に日の出観光場所に到着しました。既に多くの車が止まっており、我々のバスの止まった所からは木がちょっと邪魔になりました。朝日が昇る前に朝食を済ませ、日の出を待ちました。今日は元旦で、初日の出でもあります。初日の出は地平線から・・・といっても低木がありましたので、絵に描いたような日の出ではありませんでしたが、とにかく初日の出を拝む事ができました。こちらからみるウルルはちょっとかっこ悪い感じでした。

 いざ、ウルル登山へ・・・、ところが登山口は閉ざされているではありませんか!CLIMB CLOSED DUE TO STRONG WINDS AT SUMMIT・・・山頂が強風のためらしいですが、特に強い風とは思えませんでした。添乗員の説明では、ふもとではこれだけの風でも、山頂は大変な強風になるのだと言う説明でした。
時間が経つと状況が変わるかもしれないと言うことで、ムティジュルと言う池の観光に回りました。この写真の奥にムティジュルがあります。
この池はウルルに降った雨水が、集まってできたそうです。岩に降った雨水でも、これだけ大きな岩だと、池を作ってしまうのですね。ちょっと見にくいですが、写真の下にちょっとだけ池面が写っています。

 再度登山口に戻りましたが、やはり登山口は閉まったままです。半年前に富士登山に成功した土河原登山隊も、国立公園管理局の決定の前には、なすすべがありませんでした。(注:土河原は筆者の住む町の名で「とがわら」と読みます。)
 添乗員が登れるかどうか心配していたわけが、やっとわかりました。登れない日も結構多いようです。後で聞いたのですが、最近は、登れない日が続いていて、一昨日だけは登れたそうです。登れる確率が高い季節というものもないという事でした。
 登山口には看板が立っていて、各国の言語で注意書きが書かれていました。その中に日本語もありました。丈夫なゴム底の靴をはきましょうとか、登る前にアルコール類を飲まないようにとかいう、登山する上での注意書きとともに、 「命を大事にしましょう! 登らないで下さい」と題する注意書きがあって、次のように続いていました。

「今あなたが登ろうとしているのは非常に重要な聖地です・・・登ってはいけません。この場所の本当の意義は登ることにはありません。本当の意義はすべてのことに耳を傾けることです・・・これが正しいことです。『登らない』こと、これがあるべき姿です。」クンマナラ、伝統的所有者

「聞いてください!もしあなたが怪我をしたり死んだりしたら、あなたのお母さん、お父さん、家族の人は嘆き悲しむことでしょう。私たちも本当に悲しく思います。ですから、よく考えてください。そして、登らないでください。」バーバラ・チカツ、伝統的所有者

ガイドブックにも、アボリジニの人々はウルル登山を良く思っていないと言う由書いて有りましたが、これほどとは思っていませんでした。しかたありません。アボリジニの人々の意思を尊重して登らない事を決意しました。(と言う事にしておきましょう)
マラウォークと言うウルル周辺の散策コースに(泣く泣く)出発。天気の良い 登山日よりなのに・・・。
コースの途中には聖地のため撮影禁止の場所もありました。
もぐらが掘ったと言い伝えられている穴。
もぐらたたき発祥の地(?)
瞑想の滝。
滝の下は三方を岩で囲まれていて静かなので瞑想の場所だったそうです。 この時は水は流れていませんでした。
雨の日には ウルルのあちこちに滝ができるそうです。
この日のために用意してきた滑り止め付き軍手。ウルル登山は鎖をつたって いかなければなりません。でも、出番はありませんでした。帰国してから草取りの時に使う事にしましょう。
 散策時間も終わりました。ツアー会社が用意してくれた冷たい麦茶がとてもおいしい。バスがウルルを離れていきます。ツアー客の中にウルルに手を振って別れを告げている人がいました。私も手を振りたい気分になりましたが、おもはゆくてそれも出来ませんでした。しかし、心の中では手を振っていました。またここに来る事があるだろうか?そして私の目はウルウルでした。(ウルル探訪記終り)


 ウルル探訪記は終りですが、引き続きキュランダ(クイーンズランドの湿潤熱帯地域)、グレートバリアリーフの事も書きます。  ウルルに別れを告げた後、ケアンズまで、飛行機で約3時間の旅でした。キュランダも、グレートバリアリーフもケアンズの近くです。その日は、ケアンズのホテルに宿泊し、翌日からキュランダ、翌々日はグレートバリアリーフの予定です。
ケアンズの中心部から10kmほどの所にスカイレールの駅があります。スカイレールは全長7.5kmの長大なロープウェイです。
世界遺産に指定されている壮大な熱帯雨林を上空から見る事ができます。スカイレールの案内書によると、世界で最も美しい熱帯雨林だそうです。
(でも、写真で見ると日本の普通の山みたい・・・)
赤い色をしている バロン川。場所によって全く趣が異なります。

ワイルドライフパーク。オーストラリアの定番、コアラとカンガルー。コアラ抱っこは 有料。

バタフライ・サンクチュアリー(蝶園)。ギネスにも載った世界最大の3600mの鳥かご(虫かご?)の中に蝶が乱舞していました。
蝶園では、左写真の様な事もあり感激!
青い羽をもつユリシーズと言う蝶が有名で、確かに一番綺麗でしたが、青い羽は飛んでいる時に見られるだけで、とまると羽を閉じてしまい青い模様は見えなくなってしまいました(それで写真が撮れませんでした)。

バードワールド。ここの鳥は、えさを持っている人にすぐにとまりに来ます。殻の中の木の実を上手に割って食べていました。最初は珍しかったのですが、後では、早く飛んでいってくれよ!と言う気になりました。鳥は爪をたててとまるので結構痛い。

 旅行案内書に必ず出てくるキュランダ渓谷鉄道の写真。こんなすごい滝の横を走っていくのか!と期待していました。今回は、帰りにこの鉄道に乗りました。
すず鉱山とケアンズの町を結ぶために出来た鉄道で、線路の右は山、左は谷の状態が延々と続きます。鉄道の計画から建設開始まで4年、建設期間5年の歳月をかけた大変困難な工事だったそうです。建設にあたっては、ダイナマイトとつるはし、シャベルのような手作業用工具のみしか無かったと言う事で、密林での過酷な労働に加え疫病にも苦しめられ、工事中に命を落とした人も多数いたそうです。そんな大変な歴史を持つ鉄道をのんびりと列車が進んでいきます。
 旅行案内書にあった滝は、もう終りに近づいた頃にありました。あれれ!なんだか滝が小さいぞ!実際はあまり迫力のない滝でした。旅行会社の名誉のために付け加えておきますが、旅行案内書の写真にうそがあるわけではなく、その時期の雨量によって滝の水量が随分変わってくるからなのだそうです(自然現象なんだから、当たり前でしょ!)。でも、自分が見た時にこんなに迫力のない滝だったらクレームの一つもつけたくなります。そうこうしているうちに、平野や海が見えてきて、キュランダの旅も終りでした。

 翌日は、船に乗ってグレートバリアリーフに行きました。最初に訪れたのがグリーン島でした。ここに来るまではダイビングをするつもりはなかったのですが、船の中で長男の熱意にほだされて、体験ダイビングをしてみる事しました。
 グリーン島についてから体験ダイビングの説明を聞いたのち、ワニ園へ。クロコダイルの餌付けをみましたが、すごい迫力でした。餌に食い付く為にジャンプしたワニが着水したところ、水(泥水!)が、ある観客の親子にひっかかり、子供は泣き出し、洋服は泥だらけになってしまい気の毒でした。
 グリーン島から再び船に乗って、グレートバリアリーフに浮かぶポンツーン(浮き桟橋)へ行き、いよいよダイビングです。ダイビングの装備で感心したのは、度付きのゴーグルが有った事。0.1も見えない強度近眼の私はコンタクトレンズの愛用者です。コンタクトレンズを外す用意もしてきていなかったのですが、急遽紙コップの中にコンタクトレンズを入れて、度付きゴーグルをためして見ると、ちゃんと合うゴーグルがありました。これで先ず一安心しました。でも、最初は、おっかなびっくりでした。しかし、インストラクターの親切な説明(日本語)もあり、直ぐに慣れて楽しむ事が出来ました。海の中は将に異次元の世界で、最高でした。(写真を見ると、水族館の中に入り込んだような感じ)
 ナポレオンフィッシュや大きなシャコガイ、海がめにも遭遇しました。そしてカクレクマノミのニモ発見!オーストラリアに来る飛行機の中で見た映画ファインディング・ニモの主人公に、旅の締めくくりで会う事ができるなんて思ってもいませんでした。
 ダイビングの後、シュノーケルをしましたが、これでも充分サンゴ礁の海を楽しむ事が出来ました。ライフベストも貸してくれましたので海の中を見ながら、のんびりと浮かんでいる事ができました。

 最終日は、朝から(私は興味のない)免税店に行き、そのままケアンズ空港に向かいました。ケアンズ空港は、日本人であふれていました。日本語の看板を出している店もあり、空港内の案内放送もなんと日本語でした。この一時間の間に、名古屋、成田、福岡、関西と次々に日本行きの飛行機が出発するようです。帰りの飛行機の中から、グレートバリアリーフの島々や、ニューギニアを一所懸命見る事で、ウルルに登れなかった無念さを何とかごまかそうとする私でありました。
   


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