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良く聞かれる質問
身近な人から質問を受ける事があります。それに答えるためにこのページを
作成しました。あくまで(権威の無い)私が答えているわけですから、
そのつもりでお読み下さい。
ご興味のある質問文をクリックしてください。
――― 質問文 ―――
何に刻るの?どうやって刻るの?
作るのにどの位時間がかかるの?
刻る文字はどうやって決めるの?
――― 回答文 ―――
石に刻ります。また、印刀を使い、手で刻ります。でも、道端に転がっ
ているような石は硬くて手では刻れません。篆刻用の石(印材)が書道具屋さんに行け
ば売ってあり、それを使います。印材は、適度な柔ら
かさがありますので手で刻れます。たたいて刻るような事もしません。
印刀は、鉛筆を握るようにして持ち、刃を印材に当てて押して刻ります。
握りを変えて、引いて刻る場合もあります。印刀は一名鉄筆とも言われます。
書道の紙を石に変えて、筆を印刀に変えて、書くと言う気持ちで刻りなさい
とも言われます。
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印刀(下は万年筆) |
印刀の先端 |
印材の産地は中国です。中国しか印材を産しないと言うのも何とも不思議です。
金属や牙の様な硬い素材
ではない、手で刻れる石印材の存在を抜きにしては、篆刻はありえない
と言っても決して過言ではないでしょう。簡単な道具で出来、特殊な技術
が無くても誰でも刻れると言う事は、印を自分の表現の一手段として
使えると言う事を意味します。
蛇足ながら付け加えますと、印材は、数十円からあります。しかし、
良質なものになりますと、「黄金より高い」と言われるものもあります。
良質の印材はそれだけで実に美しいもので、まさに宝石です。
この魅力に取り付かれた人も多々あるようです。また、印の頂部に鈕(ちゅう)
と言う獅子や龍等の彫り物がある場合もあります。断っておきますが、
ほとんどの場合、鈕は篆刻家が作るものではなく(自分で作られる方も
いらっしゃいますが少ないです)、中国の専門家によるものです。
限られた空間に生き生きとした動物が彫られていたりする鈕を見ていると、
これだけで一つの芸術なのだなと思ったりします。
印材そのものの模様と彫り物が渾然一体となったものもあり、「おみごと」
としか言いようの無いものもあります。
もちろん、練習用には、そんな立派なものを使う必要はありません。
安い物で十分です。
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鈕の例1 |
鈕の例2 |
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この質問を聞く事はとても多いです。そして、いつも答えに困ります。
実際に手を動かして作る
時間としては半日もあれば出来てしまうと思います。しかし、実際は、
何と刻るかを考え、印の構成を考える時間に長短があって一概に言え
ません。制作の過程で、先生に批正を乞い、やり直しする事やボツに
なってしまう事もあります。その結果、長いものでは数ヶ月かかるもの
もあります。
これで良いと思っていた印も、期間をおいてから見ると、今まで気づか
なかった所が気になる事もあります。作っている最中は、一つの考えに
固執してしまう傾向があるのでしょうか。制作期間の中には、この様な時間
も必要なのではないかとも思っています。
ものの数分で刻りあげる人もいます。私も実際に中国の店先で見てきましたが、手馴れた様は驚嘆に値します。
私は精密な印稿を作る先生に習いました。このような真似はできませんし、したいとも思いません。
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刻る語句を決める事を「選文」と言っています。
どんな語句を選ぼうと自由ではありますが、良い印を作ろうと思うと
制限が出てきます。
先ず、意味の面から
1)意味の完結した語句である事
印面は狭いですから、簡潔な語句が使われる場合が多いです。
しかし、主語述語が、場合によっては補語、目的語が揃った、意味の
完結した語句である事が必要です。
でも、例外もあります。例えば、
「矛盾」と言う語句は、文字の意味だけからすると主語述語が揃って
いないですが、「楚の国に矛と盾と売る商人が居て云々・・・」と言
う故事から来ている慣用句です。この様な慣用句は、その故事の意味
を含んでいますので、使っても問題ありません。
2)自らが用いるのにふさわしい語句である事
印文はその人の境涯、心情、志向等にふさわしい物を使ってこそ
文雅の趣が出るものです。従って、どんなに素晴らしい意味の語句でも、
その人にそぐわなければ、笑われてしまう事にもなりかねません。
「私は神です」という語句を、神様が使われるのなら誰も何も言わない
でしょうけれど、私がこの様な語句を使ったとしたら、絶対おかしいです。
理想的には漢文、漢詩を読んで感銘を受けた語句を使う、等が良い
と思いますが、私自身は、漢文の素養が無いため、ほとんどの場合、
墨場必携、故事成語辞典等から選んでいます。
また、あまりにも有名な語句は、どなたかが既に作品にしておられる場合が
ありますので、なるべく避けたいと言う気持ちが働きます。
次に、文字の形の面から
3)作品になり易い語句である事
通常、2〜9文字の少字数ですので、一つ一つの文字の格好が良くない
といけませんし、語句全体としても印にした時、纏まりのあるものでなけ
ればいけません。
語句がどんなに良い意味であっても、芸術作品を作っている以上、
”作品になる”語句でなければなりません。
以上、もっともらしい事を述べましたが、私自身、まだ良く分かって
いない部分が多く、勉強不足をいつも感じています。
また、実際の作品作りの上で、いつも大変苦労している所でもあります。
勿論、姓名印等始めから字が決まっている場合は、その文字で
何とかするしかありません。姓名印を作る難しさもそこにあります。
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