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左右の筆順(1)文字の成立ち
左と右の筆順はどうだったかな?と思いながら、調べもせずに済ませていた時もありました。
しかし、ある時、左と右の漢字の成立ちと筆順の関係を知った時、漢字の成立ちとはこんなに面白いものなのだ、
と感じたものでした。
先ず初めに、漢字の成立ちと筆順の関係を見ていきます。
次の図は、人を上から見たイラストです。手を線で表した形が、「左」「右」の漢字の元となっています。
先ずは、「左」から考えて行きます。
上図は、金文(西周)の左と、その筆順です。手の下にある「エ」の形は呪具(いのりの道具)
と考えられています。
手に相当する部分@を書いてから、腕の部分Aを書きます。
次は、右を考えてみましょう。
上図は、金文の右とその筆順です。手の下にある「ロ」の形は、「サイ」という祝詞を入れる器を表しています。
手に相当する部分@を書いてから、腕の部分Aを書きます。手→腕の順番に書くのは「左」と同じです。
以上の事をまとめたのが下記の図です。
下の図のような変遷を経て、左と右は今のような字形と筆順になりました。
左側の文字から順番に、
金文(西周 900BC頃)
馬王堆帛書(前漢 196BC頃)
史晨後碑 隷書(後漢 169年)
ちょ(衣偏に者)遂良 楷書 房玄齢碑(唐 652年)
左側の文字から順番に、
金文(西周 900BC頃)
馬王堆帛書(前漢 196BC頃)
史晨後碑 隷書(後漢 169年)
ちょ(衣偏に者)遂良 楷書 雁塔聖教序(唐 653年)
左右の第一、二画は、今となってはあまり違いがありません。でも、書の名手達の楷書、行書には、
篆書、隷書の痕跡が見られる例があります。
これは、趙之謙の楷書です。注目して欲しいのは、右字の第一画です。
隷書と見間違うほどに、始筆は左から入ってグイっと曲がっていて隷書の雰囲気を残しています。
次にこれは、趙孟ふ(兆偏に頁)の行書です。右の始筆が見事に曲がってます。隷書の雰囲気を残したこのような始筆の楷書、行書を見ると、
字の成立ち好きの私は、嬉しくなってしまいます。
以上、左と右の漢字の成立ちと筆順の関係の話でした。
しかし、左右の筆順の話をここで終わってしまうと中途半端なのです。下記から続きの話をご覧ください。
左右の筆順(2)決定の真相
2024年2月記
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